いつもは官足法の足もみや健康に関する内容をお伝えしていますが、今回は抗がん剤治療や放射線治療による味覚障害に関連した内容です。「賛否両論」で有名な料理人の笠原将弘さんが、仙台で開催された食のイベントにいらしていた2024年10月の出来事。
イベントに足を運ぶ数日前までシェフの奥様にがんの経験があった事を知らなかったのですが、偶然目にした記事で知りました。奥様から「これなら食べられるかもしれない」というリクエストがあったら、作って持って行ったりしたそうなのです。
私の弟もそうでしたが、治療中に副作用で思うように食事が出来なくなって、食べたくても食べれない辛さや一緒に揺れ動く家族の気持ち。弟が病気をしていた頃は、治療中の食事に関する情報が十分な実感がなくて困ったので、アイディアの幅が広い料理のプロの方にお話を聞かせていただけたら、私みたいな素人よりも色んな人の役に立つヒントがあって、誰かの救いになるかもしれない。どんな物を作ったのか、お話を聞かせてほしいと思いました。
その想いを伝えて質問をして、奥様がどんな物を好まれてどんな物を作ったのか、教えていただきました。お話を伺って教えていただいた内容は、私にとって秋の実りの様に人生の大きな収穫になった気持ちに。
イベントの当日、夕方近くになってお客さんも減った頃・・・緊張しながらも話しかけて質問をしたのですが、最初はかなり迷いました。シェフは有名人ではあるけれど一人の人間。もしかしたら触れて欲しくない話題かもしれない。明るくて楽しいイベントなのに病気や辛かった頃の話を出して迷惑にならないだろうか?
だけど思い切って言葉にしてみたら、普通に会話をして下さって嬉しくなりました。そしてその場に一緒にいらしたチーム3枚舌の吉岡シェフと枡谷シェフが、優しい表情で「うん、うん」頷いて一緒に会話に参加して下さったのも心に残る出来事になりました。教えていただいた内容と一緒にその空気の温かさも伝わって、心に少しでも空間が広がったらと思ったので書き残してみます。
奥様が食べられない状態の頃に作った物で、一番に出たのが茶碗蒸しでした。「あぁ、やっぱり!そうなりますよね!」思わず言葉にしてしまいました。その他には和食の考え方で、すりつぶした野菜をお出汁でのばしたすり流しをよく作られたというお話でした。茶碗蒸しやすり流しをよく作った理由としては、野菜そのものを好まれた事やつるりとした食べやすさなども関係していたそうです。
野菜を柔らかくして潰してスープ状にした物と言えば、鶏がらなどを使った洋風のスープがすぐに頭に浮かんでしまいましたが、シェフのお話を聞けたおかげで点と点が結びついた感じになりました!すり流しという発想が今まで少しも出て来る事が無く、頭の引き出しの奥に入りっぱなしになっていてビックリ。日本人なのに(笑)
後になってこの日の出来事を振り返って思いました。そういえば当時、気持ちの余裕がなかったせいなのか頭の奥にあったはずの引き出しを忘れてしまっていたのかわかりませんが、リンゴをすりおろして食べてもらうことは思いついても、野菜も同じようにすりおろすという簡単な方法をなぜか思いつかなかった事に気が付きました。こうして経験談を聞かせていただいて改めて和食の幅広さに気づかされた気持ちです。ほうれん草も茹でてそのまま食べる以外にお出汁の水分を含ませたら、また別の感覚だったかもしれない。
こうしてシェフから教えていただいた貴重な経験談を多くの方に伝えても問題ないか念のため確認したところ、即答で許可いただいたので、こうしてありがたく伝えさせていただいております。和食のプロにお話を聞かせていただけて、本当によかったと思って感激しました。毎日の「当たり前の食事」の中に視点の変化が生まれるきっかけになれば幸いです。
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